投資事業有限責任組合(LPS:Limited Partnership)は法人格を持たず、組合事業から生じる損益は各組合員へ直接帰属します。このため、法人がLPSへ出資した場合は、分配金を受け取った時だけでなく、組合の決算報告に基づいて持分相当額の損益を会計帳簿と法人税申告へ取り込む必要があります。
01LPSの特徴
1-1LPSの概要
LPSは、組合の業務を執行する無限責任組合員(GP: General Partner)と、投資家である有限責任組合員(LP:Limited Partner)が出資して共同で投資事業を行う組合で、組合の設立には登記が必要です。
| 区分 | 役割 | 責任 |
|---|---|---|
| 無限責任組合員 (GP: General Partner) | 組合の業務を執行 | 組合債務について無限責任を負います。 |
| 有限責任組合員 (LP:Limited Partner) | 出資者として参加 | 原則として出資額の範囲で責任を負います。 |
1-2パススルー課税(法基通14-1-1の2)
LPS自体には法人税が課されません。LPSの事業から生じた利益や損失は、組合契約で定めた割合に応じてGP・LPそれぞれの損益として扱われ、各組合員が申告します。そのため、現実に利益の分配を受け又は損失の負担をしていない場合であっても、当該法人の各事業年度の期間に対応する組合事業に係る個々の損益を計算して、当該法人の当該事業年度の益金の額又は損金の額に算入します。
02組合員の会計処理
2-1損益の取り込み
組合員は、LPSへの出資について、採用する取込方法に応じ、LPSに対する出資金として、または組合財産および組合損益の持分相当額として、自社の会計帳簿へ反映します。会計処理は、契約内容の実態、組合員の関与の程度および出資目的を踏まえ、経済実態を適切に表す方法を選択します。
LPS自身の財務諸表は、金融商品会計基準ではなく、投資事業有限責任組合契約に関する法律施行規則および組合契約に基づいて作成されます。同施行規則では、投資は原則として時価を付し、具体的な評価方法は組合契約に定めることとされています。
一方、LPがLPSへの出資を会計処理する際は、LPSの構成資産が金融資産に該当する場合、その金融資産を金融商品会計基準に従って評価し、その評価額をLPの会計処理の基礎とします。LP側に適用される会計基準に照らして会計帳簿へ取り込みます。
2-2会計帳簿への取込方法
会計帳簿への取り込み方法には、以下のとおり3つの方法があります。会計上の表示方法と税務上の帰属損益額の計算方法は、それぞれの基準に従って判断するため、必ずしも同じ方法を採用する必要はありません。会計上は純額表示を選択していても、税務上は総額法に基づく明細が必要となる場合があるため、組合から受領する決算報告書や明細を保存し、申告調整の要否を確認します。
| 方法 | 会計帳簿への取込み | 税務上の取扱い | |
|---|---|---|---|
| 貸借対照表 | 損益計算書 | ||
| 総額法 | 資産・負債を持分割合に応じて各科目へ計上 | 収益・費用を持分割合に応じて各科目へ計上 | 原則的な方法。受取配当等の益金不算入、所得税額控除、引当金・準備金等に関する規定を適用できます。 |
| 中間法 | 出資金等として純額で計上 | 収益・費用を持分割合に応じて各科目へ計上 | 継続適用等を前提に認められます。受取配当等の益金不算入と所得税額控除は適用できますが、引当金・準備金等に関する規定は適用できません。 |
| 純額法 | 出資金等として純額で計上 | 持分損益を投資事業組合運用益または運用損等として純額計上 | 継続適用等を前提に認められます。受取配当等の益金不算入、所得税額控除、引当金・準備金等に関する規定は適用できません。 |
03中間法による仕訳例
次の例は、LPSへ1億円を出資した法人が、中間法により組合損益を取り込む場合の一例です。勘定科目は組合の決算報告と自社の会計方針に合わせて設定します。
3-1出資時の取扱い
GPからのキャピタルコールに基づき、LPSへ出資金1億円を払い込み。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 出資金 | 100,000,000円 | 現金及び預金 | 100,000,000円 |
3-2金銭分配
LPSの投資先の売却により、LPSから50,000,000円の金銭分配を受領。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金及び預金 | 50,000,000円 | 出資金 | 50,000,000円 |
3-3組合損益の取り込み
LPSの決算後に、GPから決算報告書等を受領し、口数別決算書の内容を会計帳簿に取り込み。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 投資原価 | 10,000,000円 | 投資収益 | 50,000,000円 |
| 組合管理費 | 1,000,000円 | 受取配当金 | 10,000,000円 |
| 組合経費 | 500,000円 | ||
| 源泉所得税等 | 2,000,000円 | ||
| 仮払消費税等 | 150,000円 | ||
| 出資金 | 46,350,000円 | ||
| 合計 | 60,000,000円 | 合計 | 60,000,000円 |
3-4出資金残高の推移
上記の仕訳後の出資金残高の推移は、以下のとおりとなります。
| 時点 | 増加額 | 減少額 | 出資金残高 |
|---|---|---|---|
| 出資時 | 100,000,000円 | ― | 100,000,000円 |
| 分配時 | ― | 50,000,000円 | 50,000,000円 |
| 組合損益取込時 | 46,350,000円 | ― | 96,350,000円 |
04税務上の留意点
4-1損益の帰属時期(法基通14-1-1の2)
組合の損益は、原則として組合員の事業年度に対応する期間の個々の損益を計算し、その事業年度の益金または損金へ算入します。ただし、組合の損益を毎年1回以上一定の時期に計算し、組合員への個々の損益の帰属が損益の発生後1年以内である場合は、組合の計算期間を基礎として計算し、その計算期間の終了日が属する組合員の事業年度へ算入できます。
金銭の分配時期ではなく、組合損益の帰属時期を基準として法人税申告へ反映します。
4-2消費税の取扱い(消基通1-3-1・11-6-2)
LPSが行う資産の譲渡等または課税仕入れ等は、各組合員が持分割合または利益分配割合に応じて行ったものとして取り扱われます。したがって、LPS自体ではなく各組合員が、自社の課税売上げ・課税仕入れとして消費税申告へ反映します。
適格請求書の交付と仕入税額控除の保存要件は、分けて確認します。LPSがその事業として適格請求書を交付するには、原則として、すべての組合員が適格請求書発行事業者であり、業務執行組合員が所定の届出書を提出していることが必要です。
一方、LPがLPSの課税仕入れについて仕入税額控除を受ける場合は、業務執行組合員が仕入先から受領した適格請求書を保存し、LPが持分相当額などを記載した精算書を保存する方法があります。
4-3有価証券の評価損(法基通9-1-7)
LPSの決算で有価証券の評価損が計上されていても、その金額がそのまま税務上の損金になるとは限りません。純額法と中間法では構成資産をLPの貸借対照表へ個別に計上しないため、LPがその有価証券の評価損を独自に損金算入することは原則としてできません。ただし、中間法でLPSの損益に含まれる評価損を取り込む場合は、法人税法上の損金算入要件を確認し、要件を満たさない金額を申告調整します。
評価損の適用を検討できる場合でも、有価証券の区分に応じた法人税法上の要件を満たす必要があります。例えば、市場価格のある有価証券は、期末価額がおおむね帳簿価額の50%相当額を下回り、かつ、近い将来に価額の回復が見込まれないことなどが要件となるため、投資先の状況を確認して税務処理の判断を行います。
4-4受取配当等の益金不算入(法基通14-1-2)
純額法では、受取配当等の益金不算入を適用できません。
4-5源泉所得税等の所得税額控除(法基通14-1-2)
純額法では、源泉所得税等の所得税額控除を適用できません。
4-6組合損失の損金算入制限(租税特別措置法第67条の12)
組合事業の業務執行に関与しない有限責任組合員など一定の組合員については、組合損失のうち、出資額を基礎として計算した調整出資等金額を超える部分が損金不算入となります。また、組合事業の損益が実質的に欠損とならないと見込まれる場合には、損失の全額が損金不算入となることがあります。
LPは一般的に特定組合員等に該当するため、当期に組合損失が生じていない場合でも、法人税申告書の別表九(二)の作成・添付が必要です。
05実務上の確認事項
LPには、GPから事業報告書、決算報告書、附属明細書のほか、口数別の決算書や源泉所得税・消費税の明細資料が交付されることが一般的です。会計・税務処理への取り込みに当たっては、これらの資料を参照し、契約内容の実態および経営者の意図を考慮した上で、経済実態を適切に反映する会計処理および表示方法を選択します。
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