100%グループ内法人の取引と税務

グループ内の一定の取引については、通常の取引とは異なる取扱いが適用されます。
本記事では、グループ法人税制の主な取扱いについて解説します。

01グループ法人税制の概要

1-1制度の概要

グループ法人税制は、完全支配関係がある法人間の一定の取引について、通常とは異なる税務上の取扱いを適用する制度で、要件を満たす法人には強制的に適用されます。
任意に選択するグループ通算制度とは異なり、グループ内の所得と欠損を通算することはできません。

1-2対象となる取引

主な対象は、完全支配関係がある法人間の一定の資産譲渡、法人による完全支配関係がある法人間の寄附金・受贈益、および完全子法人から受ける配当です。

制度適用対象法人取引相手の制限完全支配関係に関する制限
資産の譲渡取引等
(譲渡損益の繰延べ)
資産を譲渡する内国法人
(普通法人・協同組合等)
完全支配関係がある他の内国法人
(普通法人・協同組合等)
制限なし
寄附金の損金不算入寄附を行った内国法人完全支配関係がある他の内国法人法人による完全支配関係に限る
受贈益の益金不算入寄附を受けた内国法人完全支配関係がある他の内国法人法人による完全支配関係に限る
受取配当等の益金不算入配当を受けた内国法人等計算期間を通じて完全支配関係がある他の内国法人制限なし
株式の発行法人への譲渡
(譲渡損益の非計上)
株式を譲渡する内国法人完全支配関係がある株式発行法人制限なし

02グループの範囲

グループ法人税制の対象は、原則として一の者と100%出資関係(完全支配関係)にある会社間の取引です。

以下では、出資関係図を用いて、個人または法人による完全支配関係の範囲を説明します。

例外として、一定の従業員持株会が保有する株式と、役員等に付与された新株予約権等の行使により取得した株式の合計が発行済株式の5%未満の場合は、その株式を除いて判定します。

2-1個人による完全支配関係

「一の者」が個人である場合は、その個人と親族等を一の者として完全支配関係を判定します。

「親族」は、6親等内の血族、配偶者および3親等内の姻族をいいます。「一の者」が個人である場合の親族等には、その個人の親族に加え、事実上の婚姻関係にある者、その個人の使用人、その個人から受ける金銭その他の資産によって生計を維持している者、およびこれらの者と生計を一にする親族が含まれます。

「一の者」は、各株主を中心として個別に親族関係を判定するものではなく、その会社の株主関係全体をもとに親族等の範囲を判定します。例えば、株主Aと株主Bが一つの会社に出資しており、AとBに直接の親族関係がない場合でも、Aの兄弟CとBの姉妹Dが婚姻関係にあるときは、CとDの親族関係を通じてAとBが親族等の範囲に含まれるかを判定します。その上で、AとBの保有割合を合計し、その会社との間に完全支配関係があるかを判断します。

親族等の範囲
親族6親等内の血族、配偶者および3親等内の姻族
事実婚関係者婚姻の届出はないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者
使用人その個人の使用人
生計維持者その個人から受ける金銭その他の資産によって生計を維持している者
生計を一にする親族事実婚関係者、使用人または生計維持者と生計を一にするこれらの者の親族

2-2法人による完全支配関係

「一の者」が法人である場合は、その法人が発行済株式等の全部を直接または間接に保有する法人、および同一の者に完全支配される法人相互に完全支配関係があります。

直接の完全支配関係

一の者が、他の法人の発行済株式等の全部を直接保有する関係です。判定対象となる法人との間に別の法人を介さず、株主名簿等により100%の保有関係を確認します。下記図では、親会社が子会社Aと子会社Bの株式をそれぞれ100%保有しているため、親会社と各子会社との間は完全支配関係に該当します。

同一の者による完全支配関係(兄弟会社)

同一の者との間に完全支配関係がある法人相互の関係です。兄弟会社間で株式を直接保有していなくても、両社が同じ親会社に100%支配されていれば、両社の間にも完全支配関係が成立します。下記図では、子会社Aと子会社Bがいずれも親会社に100%保有されているため、子会社Aと子会社Bの関係が完全支配関係に該当します。

間接の完全支配関係(孫会社)

一の者が、完全支配する他の法人を通じて、別の法人の発行済株式等の全部を保有する関係です。複数の完全支配法人による保有割合は合計して判定します。下記図では、親会社が100%保有する子会社Aと子会社Bが、孫会社Cをそれぞれ60%と40%保有しているため、親会社は孫会社Cを間接的に100%保有し、親会社と孫会社Cの関係が完全支配関係に該当します。

完全支配関係の例
親族等(特殊の関係)親子70%30%親会社100%100%子会社A子会社B60%40%孫会社C

03譲渡損益の繰り延べ

完全支配関係がある内国法人間で一定の資産を譲渡した場合、譲渡法人に生じた譲渡利益または譲渡損失は、その時点では課税所得へ反映せず、申告調整により繰り延べます。譲受法人は実際の取引価額を会計上の取得価額とし、譲渡法人側で税務上の繰延額を管理します。

3-1譲渡損益調整資産

対象となるのは、固定資産、棚卸資産である土地等、有価証券、金銭債権および繰延資産のうち一定のものです。譲渡直前の帳簿価額が1,000万円未満の資産や売買目的有価証券などは原則として対象外となります。

譲渡法人
売却損益を計上
→
法人税申告
譲渡損益を繰延べ
→
実現事由
繰延額を戻入れ

3-2繰延べは非課税ではない

繰り延べられた譲渡損益は、譲受法人が対象資産を第三者またはグループ内の別法人へ再譲渡した場合、減価償却、評価換え、貸倒れまたは除却等を行った場合、当事者間の完全支配関係がなくなった場合などに、所定の金額を戻し入れます。

主な実現事由実務上の留意点
再譲渡グループ外だけでなく、グループ内の別法人への譲渡も対象です。
減価償却・除却等譲受法人の処理に応じて、譲渡法人が繰延額の一部または全部を戻し入れます。
完全支配関係の解消繰延額は、原則として株式の引渡し日等の前日の属する事業年度で戻し入れます。

3-3適格組織再編との比較

将来、当事者間の完全支配関係がなくなった場合は、繰り延べた譲渡損益の実現事由に該当します。

譲渡損益の繰延では、将来実現するリスクが残るため、グループ内で事業の移転等を伴う場合には、個別資産の譲渡だけでなく、適格組織再編による移転も検討が必要です。

04受贈益と寄附金

4-1受贈益の益金不算入

法人による完全支配関係がある内国法人間で寄附を受けた法人では、寄附をした法人において全額が損金不算入となる寄附金に対応する受贈益が、益金不算入となります。寄附をした法人と寄附を受けた法人の双方で、寄附金額と受贈益額を対応させて申告調整を行います。

この取扱いは法人による完全支配関係に限られます。個人による完全支配関係にある法人間の受贈益には適用されません。

4-2寄附金の損金不算入

法人による完全支配関係がある内国法人間で寄附が行われた場合、寄附をした法人では、一般の寄附金に設けられている損金算入限度額にかかわらず、その寄附金の全額が損金不算入となります。

金銭を直接交付する場合だけでなく、資産の低額譲渡、債権放棄、無利息貸付けまたは無償の役務提供によって経済的利益を供与した場合も、寄附金に該当することがあります。

受贈益の益金不算入と同様に、この取扱いは法人による完全支配関係に限られます。個人による完全支配関係がある内国法人間の寄附金には、この全額損金不算入の取扱いは適用されず、一般の寄附金として損金算入限度額を計算します。

4-3寄附修正(投資簿価の修正)

完全支配関係がある子法人が、他の内国法人から益金不算入となる受贈益を受けた場合、または他の内国法人へ損金不算入となる寄附金を支出した場合、その子法人の株主は、保有する子法人株式の税務上の帳簿価額を修正します。これを寄附修正といいます。

修正額は、子法人が受けた受贈益に持分割合を乗じた金額から、子法人が支出した寄附金に持分割合を乗じた金額を差し引いて計算します。受贈益が生じた子法人の株式は帳簿価額を増額し、寄附金を支出した子法人の株式は帳簿価額を減額します。

寄附修正のイメージ
親会社 中間子会社 孫会社 100%出資 50%出資 50%出資
寄附修正額 = 受贈益 × 持分割合 − 寄附金 × 持分割合
1.親会社が孫会社に100寄附した場合
法人税務上の取扱い
親会社寄附金100は全額損金不算入。
直接保有する孫会社株式の税務簿価を50増額
中間子会社損益処理はなし。
保有する孫会社株式の税務簿価を50増額
孫会社受贈益100は全額益金不算入
2.中間子会社が孫会社に100寄附した場合
法人税務上の取扱い
親会社損益処理はなし。
中間子会社株式の税務簿価を100減額し、孫会社株式の税務簿価を50増額
中間子会社寄附金100は全額損金不算入。
保有する孫会社株式の税務簿価を50増額
孫会社受贈益100は全額益金不算入

寄附金と受贈益を法人税の所得計算から除外するだけでなく、株主側の株式の帳簿価額と利益積立金額も併せて調整する点に注意が必要です。

寄附修正額は、別表四の所得計算を経由せず、別表五(一)の利益積立金額を直接増減させます。このため、通常の検算式では別表四と別表五(一)の金額が一致せず、その差額が寄附修正額と一致することを確認します。

4-4子会社等の損失負担

子会社等を整理または再建するために行う債権放棄、追加支援その他の損失負担は、合理的な再建計画に基づくなど相当な理由がある場合には、寄附金に該当しないことがあります。この場合は、支援を受けた法人における受贈益の取扱いも異なります。

損失負担額だけで判断せず、支援の必要性、負担者の範囲、負担割合、再建可能性および支援に至った経緯を検討します。

05子会社からの配当金

5-1受取配当金の益金不算入

内国法人が一定期間継続して100%保有する内国子法人から受ける配当は、完全子法人株式等に係る配当として、原則として全額が益金不算入となります。配当を実行する際は、保有期間、基準日、直接・間接の保有関係および配当原資を確認します。

5-2配当金にかかる源泉徴収

2023年10月1日以後に支払を受けるべき配当等について、受取法人が配当等の計算期間の初日から末日まで、支払法人の発行済株式等の全部を直接継続して保有している場合には、所得税の源泉徴収を要しません。

06子会社の清算

6-1欠損金の引継ぎ

内国法人との間に完全支配関係がある内国子法人が解散し、その残余財産が確定した場合、子法人に未処理欠損金額があれば、一定の要件のもとで株主である内国法人へ引き継がれます。株主が複数ある場合は、それぞれの持分割合に応じて引き継ぎます。

ただし、支配関係が生じてから5年を経過していない場合などには、支配関係が生じる前の欠損金や特定資産の譲渡等による損失に相当する部分について、引継ぎが制限されることがあります。清算前に、完全支配関係の継続期間、欠損金が生じた時期および使用済みの金額を確認します。

6-2子会社株式の譲渡損益

完全支配関係がある子法人の残余財産が確定した場合、株主である法人が保有する子会社株式については、譲渡利益または譲渡損失を計上しません。子法人の欠損金を一定の範囲で引き継ぐ一方、株式の消滅による譲渡損失を重ねて計上することはできません。

また、完全支配関係がある子法人へその子法人株式を譲渡する自己株式取引では、税務上の譲渡対価を譲渡原価と同額として計算するため、株式の譲渡損益は生じません。ただし、交付を受けた金銭等のうち、資本金等の額に対応する部分を超える金額は、みなし配当となることがあります。

本記事は、最終更新日時点の法令等に基づく一般的な情報提供を目的としています。実際の適用関係は、資本関係、法人区分、取引内容および取引時期等により異なります。ご自身のケースに当てはめた判断が必要な場合は、税理士等の専門家にご相談ください。