動画配信事業には、広告収入、企業案件、投げ銭、メンバーシップ、アフィリエイトなど、さまざまな収益があります。
収益の種類によって会計・税務上の取扱いが異なるため、本記事では、YouTubeを主な活動基盤とし、Google AdSenseから広告収入を得るYouTuberに対象を限定して解説します。企業案件、投げ銭、メンバーシップ、アフィリエイトなどの収入は対象としていません。
01動画配信事業の仕組み
YouTubeで広告収入を得るには、YouTubeパートナープログラムへ参加し、Google AdSenseを契約・連携したうえで、動画の収益化を有効にします。収益化した動画を視聴者が再生すると、動画の内容や視聴者の属性などに応じて広告が表示され、その広告から生じた収益の一部が、契約条件に基づいて動画配信者へ分配されます。
Google AdSenseの契約先となる事業体は、アカウントによって異なります。契約先が月ごとの収益額を集計・調整し、確定した金額がGoogle AdSenseを通じて登録口座へ支払われます。実際の契約先は、Google AdSenseの利用規約と支払明細で確認します。
02米国税務情報の提出と租税条約の適用
2-1米国源泉税の取扱い
YouTubeパートナープログラムによる収益のうち、米国の視聴者から生じた部分は、米国税法上、源泉徴収の対象となる場合があります。
ただし、日本の居住者が日米租税条約12条の適用要件を満たし、YouTubeパートナープログラムの収益について条約上の優遇措置を受ける場合、米国での源泉徴収率は0%となります。
免税を受けるには、単に日本に居住しているだけではなく、Googleへ有効な米国税務情報を提出し、租税条約の適用を申請する必要があります。これはIRSへ直接登録する手続きではなく、Google AdSenseを通じて行う手続きです。
日米租税条約により免除される税額が誤って源泉徴収された場合、その税額は日本の外国税額控除の対象にはなりません。誤った源泉徴収を避けるため、収益化後は早めにGoogle AdSense上で米国税務情報を提出し、租税条約による0%の税率が承認されていることを確認します。
2-2Google上の申請手続き
米国税務情報は、YouTube向けAdSenseの「お支払いプロファイル」から提出します。入力内容により表示される質問やフォームが異なるため、アカウントの登録情報と実態を確認してから手続きを進めます。
※以下は操作箇所を示す画面イメージです。Google AdSenseの画面構成や項目名は変更されることがあります。
「お支払いプロファイル」までスクロールし、「米国の税務情報」の編集アイコンから「税務情報を管理」を選択します。
個人・法人の区分など、画面の質問へ事実に即して回答します。回答内容に応じて、通常は個人にW-8BEN、法人にW-8BEN-Eが表示されます。
該当する場合は、YouTubeパートナープログラムに対応する「その他の著作権のロイヤリティ」を選択し、画面に表示された税率を確認します。AdSenseなど別の収益がある場合は、該当する所得区分も個別に確認します。
電子署名を行って提出した後は、フォームが「承認済み」であることと、YouTube収益に適用される税率が0%であることを確認し、作成された税務書類のPDFを保存します。
Googleの案内では、収益化しているクリエイターは税務情報を毎年確認・更新し、租税条約の恩典の申請を12月10日までに完了することとされています。
また、税務フォームは通常、署名した年の翌年から3暦年目の末日に期限切れとなります。住所、氏名、法人情報などに変更がある場合も更新が必要です。
03消費税と国境を越えた役務の提供
3-1改正前の取扱い
2015年度税制改正(2015年10月1日施行)の前は、インターネットを介した広告掲載などの役務について、原則として役務を提供する事業者の事務所等の所在地により、国内取引か国外取引かを判定していました。
このため、国内事業者が国外事業者に提供する役務は国内取引となり、一定の要件を満たす場合には輸出免税として取り扱われていました。
一方、国外事業者が日本の利用者に提供する電子書籍などは国外取引となり、日本の消費税が課されていませんでした。国境を越えたデジタルサービスの拡大を背景として、国内外の事業者間の課税の公平を図るため、2015年10月1日から内外判定基準が見直されました。
3-22015年度改正による内外判定の変更
改正後は、電子書籍、音楽、広告の配信などを「電気通信利用役務の提供」と位置付け、通常の役務提供に適用される内外判定から除いたうえで、役務の提供を受ける者の住所や本店所在地で判定します。その結果、国内事業者から国外の者への提供は、従来の輸出免税となり得る国内取引から、消費税の課税対象外となる国外取引へ判定が変わりました。反対に、国外事業者から国内の利用者への提供は、国外取引から国内取引へ判定が変わりました。
3-3Google AdSense収益の消費税判定
Google AdSense収益を、YouTubeへの広告掲載に係る電気通信利用役務の提供の対価と整理した場合、役務の提供を受ける者の住所等により国内取引か国外取引かを判定します。
AdSenseの契約先がシンガポール法人のGoogle Asia Pacific Pte. Ltd.であれば、役務の提供を受ける者が国外に所在するため、Google AdSense収益は国外取引となります。
この場合のGoogle AdSense収益は、日本の消費税の課税対象外です。
実際の契約先はアカウントによって異なる場合があるため、Google AdSenseの利用規約と支払明細で確認します。国内MCNを介する場合の取扱いは、国内MCNが契約当事者なのか、国外事業者との取引を仲介するにすぎないのかによって異なります。
※実際の契約先は、Google AdSenseの利用規約と支払明細で確認します。
04国内MCNを介する場合
4-1国内MCNの仕組み
国内MCN(マルチチャンネルネットワーク)とは、複数のYouTubeチャンネルと提携し、チャンネルや動画の管理、広告営業、著作権管理、収益化、制作支援などを行う国内事業者をいいます。
シンガポール法人のAdSense契約先から直接収益を受け取る場合は、前章のとおり国外取引となります。これに対し、国内MCNがYouTuberから動画制作・投稿等の役務の提供を直接受ける契約当事者であり、その対価を支払う場合は、受取報酬は国内取引に該当し、課税売上となります。
※実際の消費税の判定は、MCNとの契約内容と取引の実態により異なります。
4-2契約内容の確認事項
国内MCNがYouTuberから役務の提供を直接受ける契約当事者なのか、国外事業者との取引を仲介するにすぎないのかによって、消費税の判定が異なります。
専属契約の内容、動画の管理権限、国外事業者への利用許諾者、広告収入を受領する者、国内MCNから交付される支払明細などを確認し、実際の取引先と取引内容を判定します。
05消費税の申告
5-1Google AdSense収益が課税対象外となる場合
契約先がシンガポール法人で国外取引となるGoogle AdSense収益は、基準期間の課税売上高には含まれません。Google AdSense以外の国内課税売上が少額で、インボイス登録や課税事業者の選択をしていない場合は、免税事業者となり、原則として消費税の申告は必要ありません。
免税事業者のままでは、動画制作の外注費や撮影機材などに含まれる消費税の還付は受けられません。課税事業者を選択して原則課税で申告する場合は、国外取引のために国内で行った課税仕入れについても、一定の要件の下で仕入税額控除の対象となり、還付が生じることがあります。
5-2国内MCNから報酬を受け取る場合
国内MCNから受け取る報酬は国内の課税売上です。基準期間や特定期間の課税売上高、インボイス登録、課税事業者の選択などにより課税事業者となる場合は、この報酬を課税売上として消費税を申告します。
原則課税では、受取報酬に係る消費税から、動画制作の外注費や撮影機材などに含まれる控除対象の消費税を差し引いて納付税額を計算します。簡易課税の適用要件を満たす場合は、原則課税と簡易課税の有利不利を事前に比較します。
消費税の申告には、課税事業者の判定または選択、届出期限、原則課税と簡易課税の選択、仕入税額控除の区分などが関係します。
課税事業者を選択した場合は、原則として選択の効力が生じた課税期間の初日から2年間は免税事業者へ戻れません。一定の期間内に調整対象固定資産を取得した場合は、原則として取得した課税期間の初日から3年間の制限が生じます。
06外注費と源泉徴収
動画制作では、編集、台本、サムネイル、イラスト、出演、ナレーション、音楽などを外部へ依頼することがあります。法人への外注費は原則として源泉徴収の対象となりませんが、個人への支払いは、依頼した業務の内容によって源泉徴収が必要となります。
源泉徴収した所得税と復興特別所得税は、原則として支払月の翌月10日までに納付します。本章で扱う原稿料やデザイン料などの報酬にかかる源泉所得税には、納期限が6か月ごとになる納期の特例は適用されませんので留意が必要です。
6-1源泉徴収義務者
法人は源泉徴収義務者です。個人のYouTuberが源泉徴収義務者となるのは、従業員等に給与等を支払っている場合です。国内に住む個人へ源泉徴収の対象となる報酬を支払うときは、支払時に源泉所得税等を差し引きます。
ただし、個人が給与等の支払者でない場合や、常時2人以下の家事使用人のみに給与を支払っている場合は、原則として報酬・料金から源泉徴収する必要はありません。
6-2源泉徴収の対象となる業務
源泉徴収の要否は「動画制作費」「外注費」などの勘定科目ではなく、実際の業務内容で判定します。動画配信に関連して源泉徴収が必要となりそうな業務は、次のとおりです。
| 外注業務ごとの源泉徴収の確認 | 税率 | |
|---|---|---|
| 原稿・台本 | 動画の構成案、台本、ナレーション原稿などの作成料は、原稿料として源泉徴収の対象になります。 | 100万円以下10.21%100万円超の部分20.42% |
| デザイン | サムネイル、ロゴ、イラスト、タイトル画像などのデザイン料は、源泉徴収の対象になります。テロップ制作は、実際の業務内容がデザインに当たるかを確認します。 | |
| 写真撮影 | サムネイルや宣伝素材などに使用する写真の撮影料は、写真の報酬として源泉徴収の対象になる場合があります。 | |
| 翻訳・通訳 | 外国語の字幕や台本の翻訳、撮影時の通訳などに対する報酬は、源泉徴収の対象になります。 | |
| 監修・校正 | 動画の台本や解説内容に係る監修料は原稿の報酬として、校正の報酬は法令で定める報酬として、源泉徴収の対象になります。単なる内容確認は、業務の実態により判定します。 | |
| 出演等 | 出演者、モデル、ナレーターなどへ支払う報酬は、業務内容により出演等の報酬として源泉徴収の対象になります。 | |
| 音楽等 | 作曲料、音源への吹込みに対する報酬、著作権の使用料などは、源泉徴収の対象になります。 | |
源泉徴収の対象となる業務と対象外の業務を一つの契約で依頼する場合は、契約書、見積書または請求書に業務ごとの内容と金額を明記します。対価が明確に区分されていない場合は、原則として支払総額を基に源泉徴収税額を計算するため、契約時から区分しておくことが重要です。
07動画配信収入の所得区分
個人が得る動画配信収入は、活動の規模、継続性、営利性、人的・物的設備、帳簿書類の保存状況などを総合して、事業所得または業務に係る雑所得に区分します。
収入が継続していても、直ちに事業所得となるわけではありません。社会通念上、事業といえる程度で行われているかを確認し、収入と必要経費の根拠となる帳簿や請求書、支払明細などを保存します。
本記事は、最終更新日時点の法令等に基づき、情報提供等を目的として当法人の見解等を掲載したものです。情報の正確性に細心の注意を払っておりますが、掲載した情報の使用に起因して生じる結果に対して一切の責任を負うものではありません。
ご自身のケースに当てはめた判断が必要な場合は、税理士等の専門家にご相談ください。
