飲食店(重飲食)の会計・税務

飲食ビジネスは比較的参入障壁が低く、開業を検討される方が多い一方、競合も多い分野です。カフェや軽飲食、重飲食、テイクアウト、デリバリーなど形態もさまざまで、開業に当たっては、商品やサービスに加え、売上構造、初期投資、原価、人員配置、資金繰りなど、多くの検討事項があります。

本記事では主に、厨房設備を備え、店内で調理・提供する重飲食を想定し、売上構造、主要コストの管理、税務、資金繰りのポイントを整理してご案内します。

01飲食ビジネス(重飲食)の業界分析

1-1売上構造

飲食店の売上高を構成する4要素
売上高=客単価×席数×回転率×営業日数

売上高は、客単価×席数×回転率×営業日数で決まります。満席に近い店舗では席数を増やせないため、客単価と回転率の改善が中心となります。ただし、滞在時間や接客品質、立地、顧客層とのバランスが必要です。売上計画は、ランチ・ディナー、平日・休日に分けて検証します。

1-2主要コストの管理とFLR(P)

飲食店では、Food(食材原価)、Labor(人件費)、Rent(家賃)の売上比率を把握するFLRを用いて、主要コストを管理することが一般的です。

近年の飲食店運営では、商品やサービスを知ってもらい、来店につなげる広告・プロモーションが非常に重要です。そこでBLOOMでは、Promotion(広告・販促)をPとして加えた「FLR(P)」を独自の管理指標としています。

飲食店の主要コストを4つの視点で管理
FFood
食材原価30%
LLabor
人件費30%
RRent
家賃10%
PPromotion
広告・販促3%
FLR(P)合計73%

1-3業態によって変わるFLRの構成

FLRの構成は、業態、価格帯、料理の提供方法、立地などによって異なります。一般的な数値だけで判断せず、自店の収益構造に合わせて管理することが重要です。

業態の例FLRPFLR(P)その他経費利益
食材原価が高い業態鮨・高級料理店など40%25%10%3%78%15%7%
人件費が高い業態フルサービス型レストランなど30%35%10%3%78%15%7%
家賃が高い業態都心部のカフェなど25%30%15%3%73%20%7%

上記はFLR(P)の構成の違いを示すためのモデル事例であり、業界標準値ではありません。実際には価格帯、立地、営業時間、サービス方法、自店の実績に応じて設定します。

02売上と利益の改善

売上と利益を改善するには、客単価を高める施策と、F・L・R・Pを適切に管理する施策の両方が必要です。品質や集客力を保ちながら、自店の収益構造に合った改善を進めます。

2-1客単価アップの施策

客単価を単純に引き上げることは容易ではありません。単なる値上げは、客離れにつながるおそれがあります。

客単価アップの施策として、例えば、ラーメン店では、利益率の高い味玉などを加えた中価格帯の商品を、メニューや注文端末で大きく表示し、選びやすくする方法があります。これは、価格の異なる商品を「松・竹・梅」のように3段階で示し、中価格帯の「竹」をおすすめとして目立たせる考え方です。商品の内容や量の違いを分かりやすく示すことで、上位商品や追加の一品、飲み物を選んでもらいやすくなります。

2-2食材原価(F)の改善

食材原価は売上に応じて増減する変動費ですが、安価な食材への単純な置換えは、料理の品質を下げるおそれがあります。食材の歩留まり、仕込み方法、盛付け量、廃棄、複数メニューでの共通利用を見直し、品質を維持しながら原価率の改善を図ります。

2-3人件費(L)の改善

人件費は売上に応じて調整できる面がありますが、接客と調理に必要な最低人数があるため、単純には削減できません。予約状況や時間帯に応じたパート・アルバイトの配置、多能工化、仕込み工程の見直しにより、生産性を高めます。賃金が上昇する中、教育や定着、接客品質とのバランスも重要です。

2-4家賃(R)の活用

家賃は、営業時間や売上にかかわらず発生する固定費です。営業時間を延ばして店舗の稼働時間を増やすことで、家賃に対する売上高を高める方法があります。ただし、人件費や光熱費も増えるため、時間帯ごとの売上と追加コストを比較して判断します。

2-5広告・販促(P)の活用

広告・販促は、新規客の来店や予約につなげるための重要な投資です。XやInstagramなどのSNSを自店で運用すれば、外注費を抑えながら情報を発信できます。ただし、運用には時間がかかるため、広告費だけでなく作業時間も含め、来店数、予約数、売上への効果を確認します。

03飲食店会計の実務

3-1簡易損益計算書とキャッシュレスの影響

月商100万円の店舗を例に、簡略化した損益計算書を示します。食材費は売上原価、人件費と家賃は販売費及び一般管理費として計算しています。

月商100万円の簡易損益計算書(例)
区分金額売上比
売上高100万円100%
売上原価(食材費)△30万円30%
売上総利益70万円70%
販売費及び一般管理費△63万円63%
人件費△30万円30%
家賃△10万円10%
広告・販促費△3万円3%
水道光熱費・消耗品費等△20万円20%
現金の場合の利益7万円7%
決済手数料(キャッシュレス50%・手数料3%)△1.5万円1.5%
キャッシュレス50%の場合の利益5.5万円5.5%

キャッシュレス決済の手数料は、店舗の利益を直接減少させます。この例では、売上の50%を手数料率3%のキャッシュレス決済とした場合、手数料は売上高の1.5%となり、利益は7万円から5.5万円へ約21.4%減少します。

もっとも、現金にも盗難、レジ過不足、入金作業、両替手数料などの負担があります。キャッシュレスは会計の効率化や販売機会の確保につながるため、手数料だけでなく、入金時期や現金管理の費用も含めて比較します。

3-2資金繰りと投資回収

キャッシュレス売上は入金までに時間がかかるため、食材費や給与の支払いが先行すると、利益が出ていても資金が不足することがあります。現金売上と分けて、入金日と手数料を確認します。

重飲食では、敷金、内装、厨房設備などの初期投資の回収が大きな課題です。借入金の元金返済や金利上昇も見込み、設備更新や撤退時の原状回復費まで含めて資金計画を作成します。

04飲食店における税務上の留意点

4-1設備の資産区分と耐用年数

内装、給排水・電気・ガス設備、厨房機器、冷蔵庫、家具などは、内容に応じて建物、建物附属設備、機械及び装置、器具及び備品などに区分します。資産区分によって耐用年数が異なるため、厨房内の設備を一律に処理することはできません。

詳しい資産区分と耐用年数は、会計・税務の記事「飲食業の耐用年数は?」で整理しています。

4-2決済手数料にかかる消費税

同じキャッシュレス決済でも、クレジットカードとQRコード決済では、手数料の消費税区分が異なる場合があります。金銭債権の譲渡に伴う差額か、決済代行サービスの利用料かなど、契約内容を確認する必要があります。

クレジットカード
一般的な債権譲渡型の契約では、売掛債権の額と加盟店への支払額との差額は、金銭債権の譲渡に関する対価として消費税が非課税となります。
QRコード決済
決済代行サービスの対価として手数料を支払う契約では、原則として消費税の課税対象となります。インボイス等の要件を満たせば仕入税額控除を検討できます。

手数料の表示が税抜か税込か、加盟店に提示される料率に消費税が含まれるかは、決済事業者との契約によって異なります。決済方法の名称だけで負担額を比較せず、契約書や精算明細で手数料総額と消費税区分を確認します。

簡易課税制度では、仕入控除税額を売上に係る消費税額とみなし仕入率から計算するため、個々の決済手数料の消費税区分は、原則として納付税額の計算に直接反映されません。ただし、決済事業者へ支払う手数料総額は店舗の費用となるため、利益と資金繰りには影響します。

4-3飲食料品の消費税率引下げ案

2026年9月15日に閣議決定された大綱では、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、現在8%の対象となっている飲食料品の税率を1%とする案が示されています。ただし、これは今後、法案が国会で可決・成立した場合の内容であり、現時点で確定した制度ではありません。

案では、店内飲食は引き続き10%、テイクアウトや出前・宅配の飲食料品は1%となります。両方を扱う飲食店では、成立した場合に備え、POS設定、価格表示、メニュー区分、売上・仕入れの税率管理への影響を確認する必要があります。

4-4インボイス制度の経過措置

一般課税で申告する飲食店が、インボイス発行事業者ではない仕入先から食材等を仕入れる場合、仕入税額控除の割合は段階的に引き下げられます。仕入先の登録状況と取引額を管理し、原価や取引条件への影響を確認します。

2023年10月1日~
2026年9月30日
2026年10月1日~
2028年9月30日
2028年10月1日~
2030年9月30日
2030年10月1日~
2031年9月30日
2031年
10月1日~
80%70%50%30%控除不可
※ 2026年10月1日以後に開始する課税期間では、一の未登録事業者からの課税仕入れが年1億円(税込み)を超える部分に経過措置を適用できません。2024年10月1日から2026年9月30日までに開始する課税期間では、上限は10億円です。

本記事は、最終更新日時点の法令等に基づき、情報提供等を目的として当法人の見解等を掲載したものです。情報の正確性に細心の注意を払っておりますが、掲載した情報の使用に起因して生じる結果に対して一切の責任を負うものではありません。
また、本記事に関する個別のご質問にはお答えしておりませんので、あらかじめご了承ください。