飲食業の開業では、内装工事や厨房機器などに多額の設備投資が必要です。居抜き物件、中古設備、リースなどの選択肢があり、導入方法によって初期投資や資金繰りは異なります。
これらの支出は、税務上、資産の種類に応じた耐用年数で減価償却しますが、投資回収期間は売上、利益、資金繰りから、耐用年数とは別に検討する必要があります。本記事では、新品の内装・厨房機器等を中心に、資産区分と法定耐用年数を整理してご案内します。
01飲食業の開業時にはどのような支出がある?
飲食業の開業時には、設備投資だけでなく、物件契約や開業準備、開業後の運転資金も必要です。主な支出は次のとおりです。
| 支出区分 | 主な内容 |
|---|---|
| 物件関連費 | 敷金・保証金、礼金、仲介手数料、前払家賃など |
| 店舗内装費 | デザイン料、サイン工事、照明、造作、給排水・電気・ガス工事など |
| 厨房機器費 | 加熱調理機器、冷凍・冷蔵機器、製氷機、食器洗浄機など |
| 什器・備品費 | テーブル、椅子、食器、調理器具など |
| 開業準備費 | 広告宣伝費、人材採用費、研修費など |
| 仕入・運転資金 | 食材・飲料の仕入れ、開業後の人件費、家賃、水道光熱費など |
このうち、店舗内装や厨房機器、長期間使用する什器・備品は、原則として取得時に全額を経費にするのではなく、資産の種類や取得価額に応じて減価償却を行います。
一方、返還される敷金・保証金は資産として計上します。礼金、仲介手数料、開業準備のための支出、食器・消耗品などは、支出内容や取得価額、使用期間によって取扱いが異なるため、内容ごとに確認する必要があります。
02飲食業に関わる耐用年数は?
2-1厨房機器の耐用年数は?
一般的な飲食業で、料理や飲み物を提供するために使用する厨房設備は、「飲食店業用設備」に該当し、法定耐用年数は8年です。資産区分は、機器の名称だけではなく、設備の構成や実際の使用状況によって判定します。
電気冷蔵庫、オーブン、製氷機なども、名称だけで「機械及び装置」または「器具・備品」と決めるのではなく、厨房設備全体の構成、飲食提供との関係、実際の使用状況を確認して資産区分を判定します。一般的な飲食店で料理や飲み物の提供に一体として使用する設備は、「飲食店業用設備」に該当します。
同じ機器でも、使用する事業、提供先、他の設備との一体性によって資産区分が異なることがあります。
| 判断を誤りやすい使用形態 | |
|---|---|
| 宿泊客以外も利用できるホテル内レストランの厨房機器 | 飲食店業用設備として8年 |
| 宿泊客だけに食事を提供するホテルの厨房機器 | 宿泊業用設備として10年 |
| テイクアウト・配達用の料理を提供する厨房機器 | 飲食店業用設備として8年 |
| 事務室などで使用し、料理や飲み物の提供に使用しない電気冷蔵庫など | 飲食店業用設備ではなく、器具・備品として6年となる場合がある |
2-2店舗内装の耐用年数は?
| 物件の区分 | 税務上の取扱い |
|---|---|
| 自社所有の建物 | 造作部分は原則として建物本体に含めます。建物附属設備や器具・備品として区分できるものは、それぞれの資産区分で償却します。 |
| 賃借している建物 | 内部造作全体を一つの資産として、建物の耐用年数、造作の種類・用途・使用材質などを考慮し、合理的に見積もった耐用年数で償却します。建物附属設備などに明確に区分できるものは、内部造作と分けて処理します。 |
内装工事が「工事一式」として請求されていても、すべてを同じ資産として処理するとは限りません。見積書や工事明細から工事内容、用途、材質などを確認し、電気設備、給排水設備、空調設備など、建物附属設備として区分できるものは、内部造作と分けてそれぞれの法定耐用年数で償却します。
なお、賃借期間を更新できず、契約終了時に有益費の請求や造作の買取請求ができない場合は、賃借期間を耐用年数として償却できることがあります。この取扱いは、これらの契約要件をすべて満たす場合に限られます。
2-3B工事はどのように処理する?
商業施設やテナントビルの工事は、施工業者を指定・発注する主体と費用負担者によって、一般にA工事・B工事・C工事に区分されます。
| 工事区分 | 所有権 | 費用負担 |
|---|---|---|
| A工事所有者側が指定・発注 | 建物所有者 | 建物所有者 |
| B工事所有者側が指定・発注 | 建物所有者テナント | テナント |
| C工事テナント側が指定・発注 | 原則、テナント | テナント |
| ※工事区分や所有権の帰属は、建物ごとの工事区分表や賃貸借契約によって異なります。 | ||
B工事で設置した設備の所有権は、建物ごとの工事区分表や契約内容によって異なります。建物所有者に帰属する場合、テナントは設備そのものを取得していないため、建物所有者が設置・所有する電気容量の増設、空調、給排水、防災設備などの工事費をテナントが負担した支出は、繰延資産に該当することがあります。
この支出が建物を賃借するための権利金等に該当し、国税庁が示す区分1・2以外に当たる場合、償却期間は原則として5年です。ただし、契約上の賃借期間が5年未満で、契約更新時に再び同様の費用を支払うことが明らかな場合は、その賃借期間で償却します。
なお、B工事であっても、契約内容によっては完成した設備の所有者がテナントとなる場合があります。この場合は、工事内容に応じて建物附属設備などの固定資産として計上します。そのため、B工事であることだけを理由に、すべての支出を繰延資産として処理することはできません。完成した設備の所有者、工事の発注者と契約当事者、テナントが受ける便益、費用の返還の有無、退去時の取扱いなどの事実関係を確認する必要があります。
2-4什器・備品の耐用年数は?
接客用の家具、食器、繊維製品など、飲食店業用設備に該当しない資産は、器具・備品に区分し、資産の種類ごとに法定耐用年数を判定します。電気冷蔵庫などの電気・ガス機器も、設備の名称や単独で使用できるかどうかだけではなく、料理や飲み物を提供するために使用する設備かどうかによって資産区分を判断します。
| 什器・備品の例 | 法定耐用年数 |
|---|---|
| 飲食業で接客用に使用するテーブル・椅子など | 5年 |
| 事務室などで使用し、飲食店業用設備に該当しない電気・ガス機器 | 6年 |
| 陶磁器製・ガラス製の食器、厨房用品 | 2年 |
| その他の食器、厨房用品 | 5年 |
| カーテン、座布団などの繊維製品 | 3年 |
2-5店用簡易装備とは?
店用簡易装備は建物附属設備の一つで、主として小売店舗等に取り付けられる、装飾を兼ねた簡易な造作、一定の陳列棚やカウンターなどのうち、短期間(おおむね3年)内に取り替えることが見込まれるものをいいます。法定耐用年数は3年です。
| 設備のイメージ | 具体例と判断 |
|---|---|
| 壁面の装飾造作 | ルーバー、壁板、化粧板など、装飾を兼ねた簡易な造作 |
| 造り付けの陳列設備 | 建物に取り付けた陳列棚など。器具・備品に該当するものは含みません。 |
| 交換しやすいカウンター | 比較的容易に取り替えられるカウンター。単に床の上に置いたものは含みません。 |
| 対象外になりやすい設備 | 独立して移動・使用できる棚などの器具・備品や、長期間の使用を前提とする造作 |
判断に当たっては、設備の名称だけではなく、建物への取付方法、取り替えやすさ、使用予定期間を確認することが重要です。
2-6少額な減価償却資産の取扱い
法定耐用年数が定められていても、取得価額や使用可能期間によっては、通常の減価償却を行わず、事業に使用し始めた年度の費用として処理できる場合があります。
取得価額は、通常取引される単位ごとに判定します。単品では機能せず、一組で使用するものは、一組の取得価額によって判定することがあります。
法人税・所得税上の費用処理と、償却資産税の申告対象は一致しません。少額減価償却資産として全額を費用処理したものや、一括償却資産として処理したものは償却資産税の申告対象外となる一方、少額減価償却資産の特例を適用した資産は申告対象です。法人税・所得税上の費用化の時期、償却資産税の申告対象、課税標準額150万円未満の免税点を合わせて検討します。
| 区分 | 取得価額等と法人税・所得税上の主な取扱い | 償却資産税 |
|---|---|---|
| 少額減価償却資産 | 取得価額が10万円未満、または使用可能期間が1年未満の資産で、事業の用に供した年度に損金経理(個人は必要経費に算入)した金額を全額費用処理 | 全額を費用処理した場合は申告対象外 |
| 一括償却資産 | 取得価額が20万円未満(10万円未満を含む)の資産は、3年間で費用処理することを選択可能 | 一括償却資産とした場合は申告対象外 |
| 少額減価償却資産の特例 | 令和8年4月1日から令和11年3月31日までに、青色申告をする一定の中小企業者等が取得等し、事業の用に供する40万円未満の資産は、年間合計300万円を限度として、一定の要件のもとで全額を費用処理可能 | 少額でも申告対象 課税標準額が150万円未満の場合は課税されません。 |
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