代表者勘定の問題点と解消方法

代表者に対する貸付金や代表者からの借入金は、決算書では「短期貸付金」「短期借入金」などに含めて表示されることがあり、決算書だけでは相手方が分からない場合があります。

法人税申告書に添付する勘定科目内訳明細書で、貸付先や借入先、残高を確認します。相手方が代表者またはその親族である場合は、資金移動の経緯、契約の有無、利率、返済期限および返済状況を確認します。

本記事では、これらを「代表者勘定」と呼び、それぞれの問題点と解消方法を解説します。

01代表者貸付がある場合

1-1代表者貸付の問題点

代表者貸付は、会社が代表者個人へ資金を貸し付けている状態です。決算書上は会社の資産ですが、現預金のように仕入代金や経費の支払いに使用することはできません。

代表者貸付が多額であったり長期間残っていたりすると、会社の資金が事業に使われていないだけでなく、回収可能性の低い資産と見られることがあります。金融機関が会社の実態的な財務内容や返済能力を確認する際に、資産価値を減額して評価するなど、融資審査で不利になる場合があります。

役員へ金銭を貸し付けた場合、会社が他から借り入れて貸し付けたものはその借入金の利率、それ以外は貸付けを行った年に応じた利率により利息相当額を計算します。2026年中に行った貸付けは年1.3%、2022年から2025年中に行った貸付けは年0.9%が基準です。

無利息または基準より低い利率で貸し付けると、基準により計算した利息と実際に受け取る利息との差額が、原則として代表者への給与として課税されます。ただし、会社の平均調達金利など合理的な利率を定めた場合や、基準による利息との差額が年間5,000円以下の場合などは、給与として課税しなくてもよい取扱いがあります。未収利息を計上すると債権がさらに増えるため、返済方法と返済時期を定めて計画的に解消します。

1-2代表者貸付の解消方法

代表者本人から返済を受けることが基本です。返済資金が不足する場合は、次の方法を検討します。方法によって税負担や解消までの期間が異なるため、実行前に課税関係と資金の流れを確認します。

方法概要効果・留意点
本人資金による返済預貯金や保険の解約返戻金などを返済に充てます。最も基本的な方法ですが、生活資金や保障への影響、解約返戻金に係る課税を確認する必要があります。
役員報酬を利用した返済役員報酬を増額し、増加した手取額を返済に充てます。計画的な返済が可能ですが、所得税・社会保険料や、役員報酬の改定時期に注意が必要です。
退職金との相殺退任時などに支給する退職金と貸付金を相殺します。まとまった金額を解消できますが、退職の事実、支給額、決議などの要件を確認する必要があります。
事業用資産の売却代金との相殺代表者が所有する事業に必要な資産を適正な時価で会社へ売却し、その代金と貸付金を相殺します。代表者が現金を用意せずに返済できますが、所得税・消費税や登記費用などの確認が必要です。
債務免除会社が代表者への貸付金を放棄します。免除額は原則として代表者への経済的利益となり、給与として課税されます。定期同額給与などの損金算入要件を満たさないため、会社では原則として損金に算入できません。
現物配当(例外的な方法)代表者が株主である場合に、代表者への貸付金を現物配当することで、貸付金を消滅させます。会社から現金を支出せずに解消できますが、会社法上の手続き、分配可能額、配当課税などの確認が必要です。

02代表者借入がある場合

2-1代表者借入の留意点

代表者借入は、代表者が個人資金を会社へ貸し付けている状態です。

代表者借入であっても、償還期間が5年を超え、期限一括償還など長期間返済を要しないこと、業績に連動して金利負担が抑えられること、法的破綻時に他の債権より返済順位が低いことなど、資本に近い条件を備えるものは、金融機関から自己資本に近い資金と評価される場合があります。債権者が個人であることだけで対象外にはなりませんが、会社の負債であることに変わりはなく、最終的な評価は金融機関が行います。

主な留意点は次のとおりです。

留意点内容
資金繰り一時的な資金不足を補うものであれば大きな問題にはなりませんが、慢性的に残っている場合は、本業の収支や資金繰りに問題がないかを確認する必要があります。
相続財産としての評価会社側では債務ですが、代表者側では会社に対する貸付金として相続財産に含まれます。原則として、返済されるべき元本と既経過利息で評価するため、会社が債務超過であるだけで直ちに評価額がゼロになるわけではありません。
納税資金会社から返済を受けられなければ、貸付金に相続税がかかっても納税資金に充てられません。多額の代表者借入がある場合は、相続前から計画的に返済・解消を進めることが重要です。

相続対策として、貸付金を子などへ生前贈与する方法もあります。ただし、会社の債務は消えず、債権者が変わるだけです。受贈者に贈与税がかかることがあるため、納税資金も検討します。

2-2代表者借入の解消方法

会社の利益と資金繰りを踏まえて、返済計画を立てることが基本です。すぐに全額を返済できない場合は、主に次の方法を検討します。それぞれ税負担や実行までの期間が異なるため、株主構成、繰越欠損金、相続までの期間を踏まえて選択します。

方法概要効果・留意点
定期返済会社の利益と資金繰りに応じて、毎月または毎年一定額を返済します。元本の返済は代表者の所得にならないため、追加の課税を生じさせずに借入金を減らせます。ただし、会社の資金繰りに無理のない返済額を設定する必要があります。
役員報酬の見直し役員報酬を減額し、会社に残る資金を代表者借入の返済に回します。会社と代表者の社会保険料負担を抑えられる場合がありますが、会社の利益や法人税が増えることがあります。年度途中の減額は、定期同額給与の要件にも注意が必要です。
債権放棄代表者が会社への貸付金を放棄します。会社に債務免除益が生じます。繰越欠損金の利用可能額や、他の株主に対するみなし贈与の有無を事前に確認する必要があります。

債権放棄により生じた債務免除益に繰越欠損金を充てる場合、中小法人等では原則として控除前所得金額まで控除できますが、それ以外の法人では原則として控除前所得金額の50%が限度です。また、同族会社の株式価額が増加した場合、その増加額は債権を放棄した代表者から他の株主へのみなし贈与として、贈与税の対象となることがあります。

会社が資力を喪失し、再建のために負債整理へ入った場合は、会社が受けた利益のうち債務超過額に相当する部分について、みなし贈与として取り扱わない場合があります。単に一時的な債務超過であるだけでは、この取扱いの対象になりません。

03代表者勘定を増やさないための管理

代表者勘定が増える原因の一つは、会社の口座やクレジットカードでプライベートの支出を支払うことです。また、代表者が会社の経費を立て替えたまま精算しない場合も、代表者借入が増加します。

会社用の銀行口座やクレジットカードを個人用と分け、会社と個人の支払いを明確に区分することが基本です。代表者が会社の経費を立て替えた場合は、領収書などを提出して定期的に精算します。会社が代表者個人の支出を負担した場合は、その内容を確認し、速やかに会社へ返済します。

決算時だけでなく、毎月、代表者に対する貸付金・借入金の残高と増減内容を確認します。長期間残る場合は、契約書、貸付利率、返済期限および返済計画を整理することが重要です。

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