申告納税方式とは、納税者が自ら税額を計算し、申告・納付する仕組みです。この制度では、適正な申告・納付を確保するため、申告が遅れた場合、申告内容に誤りがあった場合または隠蔽・仮装があった場合に応じたペナルティが設けられており、これらは法人税の損金にも算入されません。
本記事では、税務上の主なペナルティとその留意点を解説します。
01期限内申告の場合
1-1通常の場合
税務申告書を申告期限内に提出した場合を、期限内申告といいます。期限内申告後に、自主的に修正申告書を提出した場合には、過少申告加算税は課されません。
ただし、追加税額は法定納期限後に納付することになるため、納付が遅れた期間に応じて延滞税が課されます。
1-2税務調査の場合
税務調査の通知後、更正等の予知前に修正申告した場合
税務調査の通知後、更正等を予知する前に修正申告した場合には、過少申告加算税は5%となり、追加納付税額のうち基準額(当初の申告納税額と50万円のいずれか多い金額)を超える部分は10%となります。
更正等を予知した後に修正申告した場合
更正等を予知した後に修正申告した場合または税務署による更正を受けた場合には、過少申告加算税は10%となり、基準額を超える部分は15%となります。
申告税額が過少であっても、その過少申告について正当な理由があると認められる部分は、過少申告加算税の対象となりません。
調査通知を受けただけで、直ちに更正等を予知したことになるわけではありません。ただし、調査の進行状況や質問・資料要求の内容などから更正等に至ることを認識できる場合には、具体的な指摘を受ける前でも、更正等を予知したものと判断されることがあります。このため、調査通知後から更正等の予知に至るまでの区分は、個別の事実関係により判断が分かれ得る境界領域です。
02期限後申告の場合
税務申告書を申告期限後に提出した場合を、期限後申告といいます。期限後申告では、期限内申告後の修正申告と異なり、申告書を期限内に提出していないことに対して無申告加算税が課されます。適用される割合は、申告の時期と納付税額の区分により異なります。
2-1自主的に申告書を提出した場合
原則として5%の無申告加算税が課されますが、期限内申告書を提出する意思があったと認められる場合には、無申告加算税は課されません。
次の要件をすべて満たす必要があります。
- 期限後申告書を法定申告期限から1か月以内に自主的に提出していること
- 納付すべき税額の全額を法定納期限までに納付していること
- 期限後申告書の提出日の前日から過去5年以内(酒税、輸入に係る消費税等は1年以内)に、同じ税目について無申告加算税または重加算税を課されたことがなく、かつ、この不適用を受けていないこと
2-2税務調査の場合
税務調査の通知後、決定の予知前に申告した場合
税務調査の通知後、決定があるべきことを予知する前に期限後申告した場合には、無申告加算税は、納付税額のうち50万円以下の部分が10%、50万円を超え300万円以下の部分が15%、300万円を超える部分が25%となります。
決定を予知した後に申告した場合
決定があるべきことを予知した後に期限後申告した場合には、無申告加算税は、納付税額のうち50万円以下の部分が15%、50万円を超え300万円以下の部分が20%、300万円を超える部分が30%となります。
関西電力事件では、消費税等247億7,850万9,700円を法定納期限までに全額納付していたものの、申告書の提出が期限後となったため、12億3,892万5,000円の無申告加算税が課されました。
関西電力は、期限内に全額を納付していたことなどを理由に処分を争いましたが、請求は棄却されました。
納税の意思があり、実際に期限内に全額を納付していたにもかかわらず、多額の無申告加算税が生じた事例でした。その後、2006年度税制改正により、期限内申告書を提出する意思があり、かつ、期限後速やかに申告書を提出した一定の場合には、無申告加算税を課さない取扱いが設けられました。
03無申告の場合
無申告の場合、税務署が調査に基づき、「決定」という方法により税額を確定します。この場合にも無申告加算税が課され、その割合は、納付税額のうち50万円以下の部分が15%、50万円を超え300万円以下の部分が20%、300万円を超える部分が30%となります。
04不正・無申告の繰返し・帳簿不備等による加重措置
隠蔽・仮装などの不正、無申告の繰返しまたは帳簿の不提示・記載不備等がある場合には、通常の加算税よりも重いペナルティが課されます。具体的には、通常の加算税に代えて重加算税が課されるほか、加算税の割合が加重される場合があります。
| 加重事由の類型 | 区分 | 対象・主な適用要件 | 税率・加重割合 |
|---|---|---|---|
| 隠蔽・仮装 | 重加算税 (過少申告) |
| 35% |
| 重加算税 (無申告) |
| 40% | |
| 無申告の繰返し | 短期累犯加重 (無申告・重加算) |
| +10% |
| 連年無申告加重 (無申告・重加算) |
| +10% | |
| 帳簿の不提示・ 記載不備等 | 不記帳加重 (過少申告・無申告) |
| +10% |
| +5% |
帳簿の不提示・記載不備等による加重措置は、所得税、法人税・地方法人税および消費税について、記帳義務がある売上げに関する帳簿を対象として判定されます。加重措置は、対象となる税目、申告時期、過去の無申告の状況、帳簿の記載・提示状況などにより適用関係が異なり、複数の措置が重複して適用されない場合もあります。
05加算税のまとめ
当初申告の状況、調査通知の時期および更正・決定の予知の有無に応じた加算税の基本的な取扱いは、次のとおりです。
| 当初申告 | 税額区分 | 調査通知前 | 調査通知後・予知前 | 更正等の予知後・決定 | 重加算税 |
|---|---|---|---|---|---|
| 期限内申告 | 基準額以下 | 不適用 | 5% | 10% | 35% |
| 基準額超 | 10% | 15% | |||
| 期限後申告 無申告 | 50万円以下 | 5% | 10% | 15% | 40% |
| 50万円超300万円以下 | 15% | 20% | |||
| 300万円超 | 25% | 30% |
過少申告加算税の基準額は、当初の申告納税額と50万円のいずれか多い金額です。
06利子税と延滞税
加算税は申告や納付の誤りに対するペナルティですが、申告・納付期限の延長が法令により認められた場合や、税金を期限までに納付しなかった場合には、その期間に応じて利子税や延滞税が生じます。利子税と延滞税はいずれも利息に相当する負担ですが、利子税は法令により申告・納付期限の延長が認められた場合に、延滞税は納付が期限に遅れた場合に生じるという違いがあります。
このため、税務署から指摘される前に自主的に修正申告し、過少申告加算税が課されない場合でも、追加の税額を法定納期限後に納めるときは、原則として延滞税がかかります。
6-1利子税・延滞税の割合
延滞税の割合と、利子税の計算で用いる利子税特例基準割合は、銀行の新規の短期貸出約定平均金利を基礎として財務大臣が告示する「平均貸付割合」に一定の割合を加算して算定します。なお、2026年の平均貸付割合は年0.8%です。
| 区分 | 対象期間 | 税率の算定方法 | 2026年の割合 |
|---|---|---|---|
| 利子税 特例基準割合 | 法令により認められた延長等の期間に係る利子税の算定基準 | 平均貸付割合+0.5% | 年1.3% (実際の利子税率は制度ごとに確認) |
| 延滞税 | 納期限の翌日から2か月を経過する日まで | 年7.3%と「平均貸付割合+2%」のいずれか低い割合 | 年2.8% |
| その翌日以後 | 年14.6%と「平均貸付割合+8.3%」のいずれか低い割合 | 年9.1% |
6-2延滞税の計算方法
計算開始日と納期限
延滞税は、原則として法定納期限の翌日から完納日までの日数を基礎として計算します。一方、低い割合から高い割合へ切り替わるまでの2か月を数える「納期限」は、納付税額を確定させた手続により異なります。期限内申告では法定納期限、期限後申告・修正申告では申告書を提出した日、更正・決定では更正決定等通知書を発した日から1か月後の日となります。
延滞税の計算期間の特例
税務調査等の時期によって、追加税額の確定が当初の申告から相当期間後となることがあります。このため、一定期間を延滞税の計算期間に含めない特例が設けられています。
期限内申告書を提出した場合は法定申告期限から、期限後申告書を提出した場合はその提出日から、それぞれ1年を経過した後に修正申告または更正があったときは、原則として、1年を経過する日の翌日から修正申告書の提出日または更正通知書の発出日までの期間を延滞税の計算期間に含めません。
この特例は、期限後申告書を提出するまでの無申告期間には適用されません。また、重加算税が課される場合など、偽りその他不正の行為により国税を免れた場合等にも適用されません。
6-3延滞税の計算例
計算の前提
次の前提で、計算期間の特例を適用した延滞税を計算します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 当初申告 | 4月30日決算の法人が、2025年6月30日までに法人税を期限内申告・納付 |
| 修正申告 | 税務調査を契機として、2026年8月31日に修正申告 |
| 追加税額の納付 | 修正申告から4か月後の2026年12月31日に納付 |
| 追加税額 | 100万円 |
| 適用する延滞税率 | 2025年は年2.4%、2026年は納期限から2か月を経過する日まで年2.8%、その翌日以後は年9.1% |
| 端数処理 | 各期間の計算額は表示上1円未満を切り捨て、合計した延滞税は100円未満を切捨て |
計算期間
| 期間 | 取扱い・計算 | 延滞税 |
|---|---|---|
| 2025年6月30日 | 法定納期限 | |
| 2025年7月1日~12月31日 | 100万円×2.4%×184日÷365日 | 12,098円 |
| 2026年1月1日~6月30日 | 100万円×2.8%×181日÷365日 | 13,884円 |
| 2026年7月1日~8月31日 | 特例により62日間を除外 | 0円 |
| 2026年8月31日 | 納期限(修正申告日) | |
| 2026年9月1日~10月31日 | 100万円×2.8%×61日÷365日 | 4,679円 |
| 2026年11月1日~12月31日 | 100万円×9.1%×61日÷365日 | 15,208円 |
| 延滞税の合計 | 各期間の表示額45,869円を合計し、100円未満を切捨て | 45,800円 |
法定申告期限から1年を経過する2026年6月30日までの365日間は延滞税の計算期間に含めますが、その翌日から修正申告書を提出した同年8月31日までの62日間は、計算期間の特例により除外します。修正申告日の翌日から2か月を経過する同年10月31日までは年2.8%、その翌日から納付日までは年9.1%を適用するため、延滞税は45,800円となります。
07地方税の加算金
7-1地方税における加算金の種類
通常の個人住民税の所得割・均等割および法人住民税には、加算金制度はありません。一方、法人事業税や事業所税などには、国税の加算税に対応する過少申告加算金、不申告加算金および重加算金があり、納付が遅れた場合には延滞金が生じます。
| 加算金の種類 | 適用される場合 | 割合等 |
|---|---|---|
| 過少申告加算金 | 期限内申告後、修正申告または更正により不足税額が生じた場合 | 10% (期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分は15%) |
| 不申告加算金 | 期限後申告または決定により納付すべき税額が確定した場合 | 自主的な期限後申告は5% それ以外は50万円以下15%、50万円超300万円以下20%、300万円超30% |
| 重加算金 | 隠蔽・仮装に基づいて過少申告または無申告となった場合 | 35%または40% |
7-2法人税の更正・決定に伴う法人事業税の取扱い
法人税について更正または決定の通知を受け、その通知日から1か月以内に法人事業税の修正申告をした場合は、過少申告加算金は課されません。ただし、隠蔽・仮装がある場合の重加算金は、この取扱いの対象外です。
法人税の修正申告や更正に伴って法人事業税の課税標準が変わる場合には、法人事業税についても修正申告と追加納付が必要となるため、法人税だけで手続を終えないよう留意します。
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