電気通信利用役務と消費税

広告配信やクラウドサービスなどの国境を越えたデジタル取引が拡大するなか、従来の制度では、同じサービスでも国内事業者から購入すれば課税、国外事業者から購入すれば国外取引として不課税となり、国内外の事業者間で競争条件に差が生じていました。

この不均衡を是正するため、2015年10月から、サービスを受ける者の住所または本店等を基準として課税する制度が導入されました。本記事では、国外事業者からサービスを受ける国内事業者の立場から、制度の変遷と現行の課税関係を解説します。

01制度の創設とその後の改正

制度導入後も改正が重ねられています。主な変遷は、次のとおりです。

2015年10月
国内取引の判定基準を変更役務を受ける者の住所または本店等により国内取引かどうかを判定する制度へ改められ、「事業者向け」と「消費者向け」で異なる課税方式が導入されました。消費者向けサービスでは国外事業者が納税義務を負い、国内事業者側の仕入税額控除は、登録国外事業者から受けた場合に限られました。
2023年10月
インボイス制度へ移行従来の登録国外事業者制度が廃止され、消費者向け電気通信利用役務の仕入税額控除には、原則として、適格請求書発行事業者である国外事業者から交付されたインボイスの保存が必要となりました。
2025年4月
プラットフォーム課税を開始国外事業者による国内向けデジタルサービスが拡大する一方、国内拠点のない事業者を個別に把握し、調査・徴収することが難しく、適正な課税の確保が課題となりました。このため、特定プラットフォーム事業者を介して提供され、その事業者を介して対価を収受する消費者向けサービスは、特定プラットフォーム事業者が提供したものとみなして申告・納税する制度へ変更されました。

02対象となるサービス(電気通信利用役務)

2-1電気通信利用役務の範囲

電気通信利用役務とは、インターネットなどの通信回線を介して行われるサービスをいいます。サービスそのものがインターネット等を介して提供されるものが対象となり、通信そのものや、他の役務に付随してインターネット等を利用するものは対象となりません。

該当する主な例は、電子書籍・音楽・動画・ソフトウェアの配信、クラウドサービス、オンラインストレージ、インターネット広告などです。電話・FAX・インターネット回線や、個別に依頼するソフトウェア制作などは該当しません。

2-2リバースチャージ方式

リバースチャージ方式とは、通常はサービスの提供者が行う消費税の申告・納税を、サービスを受けた国内事業者が行う仕組みです。リバースチャージによる申告が必要な場合、国内事業者は支払った対価を「特定課税仕入れ」として申告し、その取引に係る消費税額を仕入税額控除の対象とします。

03国外事業者から受ける場合の消費税

サービスが電気通信利用役務に該当するかを確認し、相手方が国外事業者である場合は、「事業者向け」と「消費者向け」のいずれに該当するかを判定します。この区分により申告・納税者が決まり、消費者向けではインボイスの有無により仕入税額控除を判定します。

3-1事業者向けサービス

判断基準

事業者向けに該当するのは、サービスの性質または取引条件等から、通常、利用者が事業者に限られるものです。インターネット広告や、事業での利用が明示された個別契約などが該当します。価格が高いことや、実際の利用者の多くが事業者であることだけでは判定できません。

課税方法

事業者向け電気通信利用役務の提供では、サービスを受けた国内事業者が消費税を申告するリバースチャージ方式が適用されます。国外事業者の請求書に日本の消費税が記載されていなくても、国内事業者側で申告の要否を確認する必要があります。

申告の要否

一般課税で課税売上割合が95%以上の課税期間、簡易課税制度または小規模事業者に係る税額控除の経過措置(2割特例・3割特例)を適用する課税期間では、当分の間、特定課税仕入れはなかったものとされ、申告にも仕入税額控除にも含めません。免税事業者も申告は不要です。したがって、リバースチャージ方式による申告が必要となるのは、原則として、一般課税で課税売上割合が95%未満の事業者です。

3-2消費者向けサービス

判断基準

事業者向けに該当しない電気通信利用役務を、便宜上「消費者向け」といいます。実際の購入者が事業者であっても、サービスの性質または取引条件等から通常の利用者が事業者に限られない場合は、消費者向けに区分されます。

納税義務者と仕入税額控除

消費者向け電気通信利用役務では、原則としてサービスを提供する国外事業者が日本の消費税を申告・納付します。プラットフォーム課税の対象取引では、特定プラットフォーム事業者が国外事業者に代わって申告・納付します。

国内事業者が仕入税額控除を受けるには、申告・納税者である国外事業者または特定プラットフォーム事業者から交付されたインボイスと、一定の事項を記載した帳簿を保存し、請求元の名称、登録番号および取引時点の登録状況を確認します。

経過措置の不適用

国内の一般的な課税仕入れでは、インボイスがない場合でも、一定の要件のもとで仕入税額の一定割合を控除できる経過措置があります。一方、国外事業者から受ける消費者向け電気通信利用役務にはこの経過措置は適用されず、インボイスがなければ、原則として仕入税額控除はできません。

プラットフォーム課税(2025年4月以降)

2015年10月からの登録国外事業者制度は、登録を受けた国外事業者から消費者向けサービスを購入した場合に、国内事業者側の仕入税額控除を認める制度でした。2023年10月からはインボイス制度へ移行し、国外事業者も適格請求書発行事業者として登録できるようになりました。

登録を受けていない国外事業者であっても納税義務が生じる場合がある一方、国内拠点のない多数の国外事業者を個別に把握し、調査・徴収することには限界がありました。このため、2025年4月から、特定プラットフォーム事業者を介して消費者向け電気通信利用役務を提供し、その事業者を介して対価を収受する取引では、当該プラットフォーム事業者が役務を提供したものとみなして申告・納税する制度が導入されました。

特定プラットフォーム事業者の一覧

国税庁が公表している名簿(2026年6月10日現在)は、次のとおりです。

デジタルプラットフォーム特定プラットフォーム事業者指定の効力発生日
App Store
Apple Books
Apple Podcasts
iTunes株式会社2025年4月1日
AWS Marketplaceアマゾンウェブサービスジャパン合同会社2025年4月1日
Google PlayGoogle Asia Pacific Pte. Ltd.
(グーグル アジア パシフィック プライベート リミテッド)
2025年4月1日
Nintendo eShop任天堂株式会社2025年4月1日
Epic Games Store
Fab
Epic Games Commerce GmbH
(エピック ゲームズ コマース ゲーエムベーハー)
2026年12月1日
(効力発生前)

04消費税の取扱いの確認フロー

サービスの提供者と内容を確認した後、事業者向け・消費者向けの区分を判定し、インボイスの有無に応じた対応を整理します。

判定の流れ
No確認すること事業者側の対応
①請求書・契約上のサービス提供者は国外事業者ですか?→
(NO)
国内事業者との取引として、請求書等に基づく通常の消費税処理を確認
↓(YES)
②電子書籍・動画・クラウドなど、サービス自体がインターネット等を通じて提供されるものですか?
(通信回線の提供や、他の役務に付随する利用を除く)
→
(NO)
電気通信利用役務の対象外として、取引内容に応じた消費税処理を確認
↓(YES)
③サービスの性質または取引条件等から、通常、利用者が事業者に限られますか?
(価格が高いことや、実際の利用者の多くが事業者であることだけでは判定しない)
→
(YES)
事業者向け
リバースチャージ方式で処理し、申告の要否を確認(3-1)
↓(NO:消費者向け)
④請求元は、登録番号を記載したインボイスを発行していますか?→
(YES)
消費者向け
請求元の名称、登録番号および取引時点の登録状況を確認し、仕入税額控除を判定(3-2)
↓(NO)
消費者向け
インボイスを取得できなければ、原則として仕入税額控除の対象外(3-2)

本記事は、最終更新日時点の法令等に基づき、情報提供等を目的として当法人の見解等を掲載したものです。情報の正確性に細心の注意を払っておりますが、掲載した情報の使用に起因して生じる結果に対して一切の責任を負うものではありません。
ご自身のケースに当てはめた判断が必要な場合は、税理士等の専門家にご相談ください。