個人が所有する高級スポーツカーが生活に通常必要でない資産として課税対象となる場合、購入価額以下で売却しても譲渡所得が生じることがあります。税務上の取得費は、購入価額から減価償却費相当額を控除して計算するためです。
課税関係を確認する際のポイントは、生活に通常必要な動産に該当するか、税務上の取得費はいくらか、所有期間が5年を超えるかの三つです。本記事では、個人が私用で所有する高級スポーツカーを単発的に売却する場合を前提として解説します。
01高級スポーツカーの課税関係
1-1生活に通常必要な動産は非課税
所得税法では、家具、じゅう器、生活上通常必要と認められる通勤用の自動車、衣類など、生活に通常必要な動産の譲渡による所得は非課税とされています。一方、主として趣味、娯楽、保養または鑑賞の目的で所有する資産などは、生活に通常必要でない資産として扱われます。
| 区分 | 売却益 | 売却損 |
|---|---|---|
| 生活に通常必要な動産 | 非課税 | 損失はなかったものとされる |
| 生活に通常必要でない資産 | 総合課税の譲渡所得 | 原則として他の所得と損益通算できない |
1-2高級スポーツカーの判定
高級スポーツカーであることだけを理由に、一律に課税関係が決まるわけではありません。ただし、趣味や娯楽を主な目的として所有し、日常生活や通勤のために通常必要な自動車とは認められない場合には、生活に通常必要でない資産として、売却益が課税対象となります。
判定に当たっては、車種や価格だけでなく、保有目的、使用頻度、走行状況、ほかに所有する自動車の有無など、実際の使用状況を確認します。
02譲渡所得の計算
生活に通常必要でない高級スポーツカーの売却益は、土地・建物や株式等の譲渡とは異なり、給与所得などと合算する総合課税の譲渡所得として計算します。
2-1基本となる計算
譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額(最高50万円)
取得費には購入代金、購入手数料、設備費、改良費などが含まれ、譲渡費用には売却のために直接要した費用が含まれます。50万円の特別控除は、その年の短期譲渡益と長期譲渡益の合計額が上限となり、短期譲渡益から先に控除します。
2-2所有期間による違い
取得した日から売却した日までの所有期間により、総合課税の対象となる金額が異なります。
| 区分 | 短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 |
|---|---|---|
| 所有期間 | 5年以内 | 5年超 |
| 総合課税の対象 | 譲渡所得の全額 | 譲渡所得の2分の1 |
総合課税では、給与所得などの他の所得と合算して所得税を計算するため、実際の税率はその年の所得金額等によって異なります。
2-3取得費から控除する減価償却費相当額
自動車は、使用または期間の経過により価値が減少する資産です。私用の自動車であっても、税務上の取得費は、購入価額等から所有期間に対応する減価償却費相当額を控除して計算します。
非業務用資産の減価償却費相当額は、同種の減価償却資産の法定耐用年数を1.5倍した年数により、旧定額法に準じて計算します。したがって、購入価額と同額で売却しても、減価償却費相当額に対応する譲渡益が生じることがあります。
03参考となる裁判例・裁決事例
3-1生活に通常必要な動産の判定
生活に通常必要な動産に該当するかが争われた事例として、サラリーマンマイカー税金訴訟があります。自動車事故後のマイカー売却で生じた譲渡損を給与所得と損益通算して申告したことに対し、国税当局がこれを認めなかったため争われた事例です。
第一審は生活に通常必要な動産と認定しましたが、第二審は、自動車の使用全体に占める通勤利用の割合が僅かであったことなどから、生活に通常必要な動産には該当しないと判断しました。最高裁も第二審の結論を維持し、譲渡損と給与所得との損益通算は認められませんでした。
3-2限定生産車と減価償却
未公表裁決として紹介されている事例に、生産台数が限定されたフェラーリが「使用または期間の経過により減価する資産」に該当するかが争われたものがあります(令和2年3月10日裁決・東裁(所)令元第84号)。
この裁決では、限定生産であっても、歴史的価値や希少価値により代替性がないとまではいえず、登録を受けて公道を走行していたことなどから、車両として使用する目的で購入されたものと認定されました。その結果、時の経過により価値が減少しない資産には該当せず、取得費から減価償却費相当額を控除する取扱いが維持されました。
高級車や限定生産車であっても、名称や市場価格だけで判断するのではなく、取得目的、使用実態、登録・走行状況などの事実関係を整理する必要があります。
04まとめ
生活に通常必要な動産の譲渡による所得は非課税ですが、複数台の高級スポーツカーを保有している場合には、保有目的や使用状況等によって、生活に通常必要な動産とは認められず、生活に通常必要でない資産の譲渡と判断される可能性があります。
仮に取得価額と同額で売却した場合でも、取得費から非業務用資産の減価償却費相当額が控除されるため、売却益が生じ、譲渡所得に対する税負担が生じることがあります。
納税者からすれば、複数台を所有しているという事情などから高級スポーツカーが生活に通常必要でない資産と判断され、課税されることには、納得しにくい面もあります。保有目的や利用形態によっては法人で所有することも選択肢となりますが、法人所有には業務関連性や私的利用に伴う課税など別の論点があるため、個別の検討が必要です。
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