免税店のリファンド方式への変更

外国人旅行者向けの輸出物品販売場制度は、2026年11月1日からリファンド方式へ移行します。本記事では、免税店が変更すべき販売・返金の流れ、対象物品、会計処理、免税販売管理システムおよび移行準備を解説します。

01導入の背景

1-1現行制度の問題点

現行制度では、免税購入品の国内転売など旅行者側の不正利用が問題となる一方、免税店は販売時にその後の持出しや転売を把握できず、免税要件を満たさない取引が事後的に判明した場合には、販売時に受け取っていない消費税を納付するリスクがありました。

また、購入者の資格確認、物品区分、購入上限額および特殊包装などの事務負担もあるため、不正利用の防止、免税店側のリスクおよび事務負担の見直しを目的として、出国時の持出し確認を基礎とするリファンド方式が導入されることになりました。

1-2新制度の概要

新制度では、販売時に消費税を受け取り、旅行者が購入日から90日以内に出国して税関で免税対象物品の持出し確認を受けた場合に、免税店等が消費税相当額を返金します。税関の確認を受けられなかった取引は免税にならず、返金も行われません。

この仕組みにより、国内転売などの不正利用を防ぎ、免税店が販売後に消費税を負担するリスクを抑えられます。また、一般物品と消耗品の区分、消耗品の購入上限額および特殊包装が廃止され、店舗の事務負担も軽減されます。

1-3経過措置

2026年10月31日時点で許可を受け、免税販売手続の電子化に対応している一般型または手続委託型の輸出物品販売場は、同年11月1日に新制度の一般型輸出物品販売場の許可を受けたものとみなされるため、原則として改めて許可申請をする必要はありません。手続委託型は、現在の委託関係等に変更がなければ、従来の承認免税手続事業者への委託を継続できます。

一方、2026年10月31日までに「輸出物品販売場における購入記録情報の提供方法等の届出書」を提出していない電子化未対応の免税店は、同日をもって許可の効力を失います。11月1日以後も免税販売を行う場合は、電子化に対応し、新制度の免税店許可を受ける必要があります。

02免税手続きの見直し

2-1免税対象物品の見直し

リファンド方式では出国時に持出し確認を行うため、販売時の物品区分や包装などの要件が次のとおり簡素化されます。

項目改正前改正後
物品の区分一般物品と消耗品に区分区分なし
免税対象金額一般物品:税抜5,000円以上
消耗品:税抜5,000円以上50万円以下
区分せず、同一店舗・同一日の税抜合計額5,000円以上
特殊包装消耗品は指定された方法による包装が必要不要
対象物品通常生活の用に供する物品用途を問わない。ただし、金地金等および消費税非課税物品は対象外

上限額や包装要件がなくなっても、購入者が出国時に全ての免税対象物品を所持し、税関確認を受けて国外へ持ち出す必要があります。

2-2送信事項の変更

リファンド方式への移行に伴い、購入記録情報は新しいインターフェースに変更されます。免税店またはシステム事業者は、販売時の入力項目と送信方法を改修する必要があります。

項目改正前改正後
購入者情報旅券番号または上陸許可書等の許可書番号を送信旅券番号の送信を必須化し、許可書番号を廃止
日本国籍者の送信項目も変更
在留資格米軍構成員は「99(その他)」「96(米軍構成員)」として独立
商品区分一般物品・消耗品の区分を送信区分を廃止
高額商品商品情報詳細等の必須送信なし単価100万円以上の物品は商品情報詳細等を送信
取消・訂正取消しまたは訂正データで処理洗替方式に統一
送信対象直送制度の対象物品と出国予定情報を送信購入記録情報の送信対象から削除

2-3確認方法等の見直し

船舶観光・乗員・緊急・遭難による上陸許可を受けて在留する外国人は、上陸許可書に加えて旅券の提示が必要となり、購入記録情報に用いる番号も旅券番号へ統一されます。日本国籍の非居住者は、在留証明または戸籍の附票の写しに加え、国外転出の記載があるマイナンバーカードでも確認できるようになり、証明書類の写し等の保存は不要となります。

03免税店の実務対応

3-1免税システム

リファンド方式では、購入記録情報の送信に加え、税関確認結果を照会・取得し、対象となる取引とひも付けて保存するシステムが必要です。取得した結果に基づき、免税の可否や返金対象額を正確に管理できる体制が必要です。

一般に免税システムを自社で開発することは困難であるため、実務上は外部の承認送受信事業者への委託が選択肢となります。委託に当たっては、既存のPOS・決済・会計システムとの連携、税関確認結果の取得頻度、エラー発生時の対応、データの保存方法および利用料金を確認します。

3-2購入者への返金

購入者への返金方法は、消費税法令で指定されておらず、銀行振込、クレジットカード、アプリ送金、出国港での現金返金等により行います。免税店が自ら行うこともできますが、返金方法によっては、資金決済法に基づく資金移動業の登録や、犯罪収益移転防止法、外国為替及び外国貿易法等への対応が必要となる場合があります。このため、実務上は外部事業者への委託が選択肢となります。

また、返金手続に係る手数料の負担者について制度上の定めはなく、旅行者負担とすることもできます。委託先を選ぶ際は、対応する決済方法、手数料の負担、返金時期、個人情報の管理、会計システムとの連携および返金できなかった場合の取扱いを確認する必要があります。

04旅行者側の手続

4-1税関の検査

旅行者は、購入日の翌日から90日目までの出国時に、税関に対して免税手続用端末等で免税申請を行う必要があります。空港の一般エリアの免税手続用端末へ旅券を読み取らせると、税関検査の要否が表示され、検査不要のグリーン判定の場合は端末で手続が完了し、検査が必要なレッド判定の場合は税関の検査場所で免税対象物品を提示します。なお、全ての免税対象物品が現物検査の対象となるわけではなく、同じレシートに含まれる物品のうち一つでも所持していない場合は、そのレシートに含まれる全ての物品について返金を受けることができません。

4-2出国手続

税関の検査は一般エリアで行われるため、検査時点では実際の出国は完了していませんが、その後遅滞なく国外へ持ち出す必要があります。持ち出さなかった場合は、消費税相当額が徴収され、罰則の対象となります。

4-3混雑への対応

新制度では、免税を希望する全ての旅行者が出国時に免税手続用端末等で免税申請を行う必要があります。税関職員による免税対象物品の現物検査はレッド判定の場合に行われますが、繁忙時間帯には端末周辺や検査場所で混雑が生じる可能性があります。税関はキオスク端末の増設、利用者の誘導および主要空港でのスマートフォンによる手続を進めており、旅行者は通常より早めに空港へ到着して手続を行う必要があると考えられます。

05会計・消費税の処理

5-1販売時は課税売上げ

税抜経理による仕訳例では、販売時は税込価格を受け取るため、課税売上げと仮受消費税を計上します。振替処理は、税関確認情報を取得する都度行う方法のほか、月次等の一定のタイミングでまとめて行うことも認められています。販売と税関確認が異なる課税期間になる場合もあるため、購入記録情報と税関確認情報を取引単位で照合できる管理が必要です。

5-2免税売上げへの振替

税関確認情報を取得・保存した取引は免税要件を満たすため、課税売上げから免税売上げへ振り替え、購入者へ返金する消費税相当額を未払金等として計上します。

5-3返金できなかった場合

購入者側の口座情報の誤りなどにより返金できなかった場合でも、税関確認情報を保存していれば免税の適用を受けることができます。当事者間の契約により返金が不要となった消費税相当額は、雑益として不課税処理する取扱いが示されています。

06まとめ

免税店における一連の実務は、次のとおりです。

販売から返金までの流れ
No手続内容
①購入者の確認免税店が旅券等により免税購入対象者であることを確認します。
↓
②購入記録情報の送信免税店は消費税を含む税込価格で販売し、購入記録情報を免税販売管理システムへ送信します。
↓
③販売時の会計処理税込価格による販売を課税売上げとして処理し、税抜経理では仮受消費税を計上します。
↓
④出国時の税関確認購入者は購入日の翌日から90日目までに出国し、旅券等を提示して税関の確認を受けます。税関から求められた場合は、免税対象物品も提示します。
↓
⑤確認情報の取得免税店または承認送受信事業者が、免税販売管理システムから税関確認結果を取得します。
↓
⑥免税売上げへの振替税関確認済みの取引を課税売上げから免税売上げへ振り替え、返金する消費税相当額を未払金等として計上します。
↓
⑦消費税相当額の返金免税店または委託先が購入者へ返金し、計上した未払金等を解消します(契約上返金が不要となった場合は雑収入に振替)。

本記事は、最終更新日時点の法令および公表資料に基づく一般的な情報提供を目的としています。実際の適用関係は、販売場の許可区分、委託関係、返金方法およびシステム構成等により異なります。