源泉所得税と印紙税は、所得税や法人税などの申告納税とは納付の仕組みが異なります。源泉所得税を期限までに納付しなかった場合には不納付加算税、課税文書の印紙税を納付しなかった場合には過怠税が課されます。
自主的に対応した場合でも、税務調査による告知や決定を予知していたかどうかによって税率が異なるため、納付漏れに気付いた時点で要件と手続きを確認することが重要です。
01源泉所得税のペナルティ
1-1源泉所得税と不納付加算税
給与や報酬等について納付すべき源泉所得税を期限までに納付しなかった場合は、不納付加算税の対象となります。税務調査による納税の告知を予知する前に納付したか、告知を受けたか、隠蔽・仮装があるかによって、適用される税率が異なります。
| 加算税 | 適用場面 | 税率 |
|---|---|---|
| 不納付加算税 | 納税の告知を受けずに法定納期限後に納付し、その納付が、調査があったことにより告知を予知してされたものでない場合 | 5% |
| 上記以外で、期限までに納付しなかった場合 | 10% | |
| 重加算税(不納付) | 隠蔽・仮装に基づいて源泉所得税を納付しなかった場合 | 35% |
源泉所得税を法定納期限後に納付する場合は、不納付加算税(隠蔽・仮装がある場合は重加算税)のほか、納付が遅れた期間に応じて延滞税も課されます。
不納付加算税の計算額が5,000円未満となる場合は、その全額が切り捨てられます。5,000円未満かどうかは、所得の種類ごと、かつ法定納期限の異なるごとに判定します。
1-2期限内に納付する意思があったと認められる要件
法定納期限までに納付する意思があったと認められる場合には、不納付加算税は徴収されません。
次の要件をすべて満たす必要があります。
- 源泉所得税等を法定納期限から1か月以内に自主的に納付していること
- 納付に係る法定納期限の属する月の前月末から起算して過去1年間に、源泉所得税等について納税の告知を受けたことまたは法定納期限後に納付したことがないこと
1-3租税条約を適用する場合
非居住者または外国法人に国内源泉所得を支払う場合は、国内法だけでなく租税条約も確認します。条約による源泉所得税の軽減または免除を受けるには、原則として、最初の支払日の前日までに、受取人が租税条約に関する届出書を支払者を経由して、支払者の納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
期限までに届出書を提出していない場合、支払者は国内法の税率で源泉徴収します。後日、所定の手続きにより、租税条約による軽減・免除後の税額との差額について還付を請求できます。ただし、この還付請求で還付されるのは本税部分であり、当初の納付が期限後であったことにより課された不納付加算税や延滞税などの附帯税は還付されません。
02印紙税のペナルティ
2-1印紙税と過怠税
課税文書に必要な収入印紙を貼らなかった場合や、貼り付けた収入印紙を消印しなかった場合は、過怠税が徴収されます。
| 区分 | 適用場面 | 過怠税の額 |
|---|---|---|
| 不納付 | 不納付事実申出 印紙税の調査があったことにより過怠税の決定を予知してされたものでない申出を行った場合 | 本来の印紙税額の1.1倍 (本税を含む) |
| 賦課決定 税務署が印紙税の不納付を認定し、過怠税の賦課決定をした場合 | 本来の印紙税額の3倍 (本税を含む) | |
| 消印漏れ | 貼り付けた収入印紙を所定の方法で消印しなかった場合 | 消印されていない収入印紙の額面相当額 |
過怠税の合計額が1,000円に満たない場合は、原則として1,000円となります。
2-2印紙税不納付事実申出
印紙税を納付していないことに気付いた場合、作成済みの文書に後から収入印紙を貼るのではなく、不納付となった課税文書、その写しまたはひな型を添付して、課税文書の作成場所を所轄する税務署に「印紙税不納付事実申出書」を提出します。その申出が、印紙税の調査があったことにより過怠税の決定を予知してされたものでない場合には、過怠税は本来の印紙税額の1.1倍(本税を含む)に軽減されます。
税務署による過怠税の賦課決定後、送達された納税告知書により金銭で納付します。過怠税には本来の印紙税額に相当する額が含まれるため、本税を別に納付するものではなく、過怠税の全額が法人税の損金にも所得税の必要経費にも算入されません。
2-3印紙税と税務調査
税務調査では、契約書や領収書などの課税文書について、収入印紙の貼付や消印の状況を確認されることがあります。法令上、印紙税を納付していない場合の過怠税は原則として本来納付すべき印紙税を含めた3倍です。
実務では、税務調査の過程で対象文書を自主監査し、不納付事実申出書を提出した結果、1.1倍の過怠税として取り扱われるケースも多くあります。ただし、法令上は、その申出が印紙税の調査により過怠税の決定を予知してされたものでないことが要件であり、調査の経緯や申出の時期などにより個別に判断されます。
印紙税は1通ごとの税額が小さくても、同じ書式の文書を継続的かつ大量に作成している場合には、課税文書の判定誤りが長期間続くことで対象文書数が累積し、過怠税が多額になることがあります。
2010年の報道によると、りそな銀行は、大阪国税局の税務調査により、2009年9月までの約3年間に作成した約60万枚の文書について、印紙税約2億5,000万円の納付漏れを指摘されました。過怠税を含む追徴額は約2億8,000万円とされ、対象には、行員が顧客から金銭などを預かった際に交付した「受取書」などが含まれていました。
03納付漏れに気付いた場合
源泉所得税または印紙税の納付漏れに気付いた場合は、対象となる支払・課税文書、金額、法定納期限、税務調査の連絡や実施状況を確認します。そのうえで、源泉所得税は本税と延滞税を含む納付額、印紙税は不納付事実申出の適用関係を整理し、速やかに所轄税務署へ相談します。
同じ原因による漏れがほかの月や文書にもないかを確認し、源泉所得税の納付管理表、契約書・領収書のひな型、印紙税の判定手順を見直すことが再発防止につながります。
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